イチゴの気持ち






 立ち寄った島は春島で季節は夏。
 島の特産品は苺だった。
 春島の夏、とくれば、苺は正に旬の時期。
 島中至る所に甘い香りが溢れている。
 量も種類も豊富なそれを堪能するため、一行が向った先はと言えば。
 それは当然、「イチゴ狩り」だった。



「おぉ〜〜〜〜ッ?!!すっげぇ!!!」
「これ全部、イチゴかぁ!!!」
 農家のおかみさんに案内された大きな温室で、ルフィ達が歓声を上げた。
 立ち寄った農家では50棟近い温室で苺を作っていた。
 案内されたのはその内の1棟。中に入ったとたんに、苺の甘い香りが出迎えてくれる。
 はしゃぐ皆に大柄なおかみさんが笑いながら声をかけた。
「はーい、じゃあ、ルールをお浚いするからねー。こっち向いとくれ」
 そう言っておかみさんは、大きな藤製の籠を掲げてみせる。
「制限時間は1時間。摘んでいいのは、この籠1つ分だけ。2つ目以降の籠は、追加料金が掛かるから、気を付けるんだよ。その代わり、籠1つならどれだけ山盛りにしても構わないからね」
「おう!一杯取るぞ!!」
 ルフィとチョッパーが笑顔で籠を振りかざす。
 サンジが大きな声で怒鳴った。
「いいか、ヤロウども!!この苺狩りの成果に、きょうのスペシャルおやつの出来が懸かってるんだからな!!ナミさんと!ロビンちゃんのためにも!!張り切って摘みやがれ!!!」
「おおーッ!!!」
「楽しみですねー」
「頑張るのよ、あんた達」
「って、お前もだろ!」
「……まぁ、言われなくてもやるけどよ」
 威勢良く返事をするメンツと楽しそうなメンバーと。
 そんな皆を見て、おかみさんもにこにこと笑う。
「うん、頑張るんだよ。それからこれが重要なんだけど、いいかい、絶対にこの中で食べたらダメだからね。それと、摘んでみたらまだ青かったからって、捨てたりするのもダメだよ。摘んだ物はちゃぁんとお持ち帰りする事!もし見つけたら、全員の苺を没収するからね!」
「おう、解ったぞ!」
「……あんた、本当に大丈夫?」
 笑顔で答えるルフィにナミが疑わし気な視線を向けた。
「どう考えても危なすぎよね。ゾロ、ちゃんと見張っててよね」
「あぁ?何でおれが」
 いきなり話を振られてゾロは眉を寄せたが、当然、ナミに勝てる訳も無く。
「何、言ってんのよ。あんたの管轄でしょ?」
 ぴしゃりと言い切られて肩を落とす。管轄ってなんだよ・と呻いた所で、結局従うしか無いのだが。
「そろそろ始めようかね。15分毎にこのベルを鳴らすからねー。それじゃあ、はい、スタート!!!」
 そう言って、おかみさんが手にした大きなハンドベルを鳴らす。
 それを合図に、皆は歓声を上げて温室の中を走り出した。


「あ!コレ、でっけェ!!ウマそう!!!」
 早速見つけた大きな苺の前にしゃがみ込んでルフィは手を伸ばす。
「おい、喰うなよ!」
「ししし!解ってるって!!」
 慌てて声をかけるゾロに笑って、ルフィは苺を掴んで引っ張った。
 ところが。
「ん?取れねェ?」
 引っ張ってみても取れそうにない。蔓がぴんと伸びるだけで、一向に外れないのだ。
 じゃあ、と千切ろうとしたが、細い蔓は思ったより頑丈で片手では千切るのも難しい。
 籠を地面に置いて両手を掛けた時に、ゾロが後ろから覗き込んだ。
「何、やってんだよお前」
「だってこれ、取れねェ」
 呆れた様な声に口を尖らせて答える。
 その声に、近くに居たチョッパーが振り返った。
「ルフィのもか?おれのも取れねェんだー」
「そうだろ!何か、引っ張っても全然取れてこねェんだよな」
「マジかよ?」
 ルフィとチョッパーの声にゾロが呻く。
 他の仲間達も怪訝そうに様子を伺う。
 その声におかみさんが近寄って来た。
「どうしたんだい?ぼうや達」
「おばちゃん、これヘンだ。取れねェぞ」
 そう言ってルフィは苺を蔓が付いたまま引っぱり上げた。
 隣でチョッパーが頷いている。
 その2人を見比べてから苺を一目見て、おかみさんは身体を揺すって大きく笑った。
「ああ、それは当然だよ。だってまだ熟してないからねぇ」
「ええぇ?!!だってこんなに真っ赤だぞ?!!」
 チョッパーが思い切り驚く。
 ルフィの手の中にある苺は綺麗に真っ赤で、どう見ても熟してる様にしか見えないのだ。
 疑わし気な顔の2人に、おかみさんは仕様がないねぇ・と笑うとエプロンのポケットから小さな折りたたみナイフを取り出して。
「どれ、貸してごらん」
 2人の傍にしゃがみ込むと、ルフィの掴んでいる苺へと手を伸ばした。
 そしてナイフで蔓を切ると、手の中でヘタを落として2つに切ってみせる。
 掌の上で断面がよく見える様に苺を転がした。
「ほら。中はまだ真っ白だろう?」
 ルフィとチョッパーは覗き込んで、驚きの声を上げた。
「あれ?!!ホントだ!!!」
「えぇ?!!なんで?!!」
 何時しか集まっていた他の皆も驚いて覗き込む。
 確かに、おかみさんの掌の上の苺は表面こそ真っ赤だが中はまだ真っ白だったのだ。
 驚く皆に笑いながら、おかみさんは苺を掲げてみせる。
「表面から徐々に色付くからね。中まで完全に熟するには時間がかかるもんさ。どれ、特別だよ、食べてごらん?」
 そう言われて1度顔を見合わせてから、ルフィとチョッパーは半分ずつの苺に手を伸ばす。
 口の中に放り込んで。
 そして。
 同時に渋い顔をした。
「…………味、しねェ」
「うん。むしろ、苦い」
 他の皆も納得する。ルフィは味覚には正直だし、何よりも噛んだ時に、カリ・という固そうな音まで聞こえたのだ。
 その様子におかみさんは笑って頷くと、苺の葉を掻き分けて少し離れた場所を指差した。
「じゃあ、ぼうや、今度はこれを摘んでごらんよ」
 指し示したその先には、やっぱり真っ赤な苺。
 ルフィは軽く首を傾げてから、その苺に手を伸ばした。
 そして、掴んだとたん。
「おぉ?!!取れた!!」
 思わず声を上げてしまう。
 苺は引っ張るどころか、軽く掴んだだけで簡単に手の中に転がり込んできたのだ。
 目を丸くするルフィの横でチョッパーも驚いている。
「なんでだ?!!さっきのは全然取れなかったのに!」
「そりゃあ、ちゃんと熟してれば取れるもんだよ」
 そう笑っておかみさんはルフィの手から苺を取ると、先程と同じ様にヘタを落として2つに切ってみせた。
 今度の苺は、中までちゃんと赤くなっている。
「ほらね?全然違うだろう?」
「ホントだ!真っ赤だ!!」
「すっげェ!!さっきのと全然違う!!」
 目を丸くする2人に、おかみさんが笑って苺を差し出す。
「じゃあ、これも味見してごらん」
「おう!喰うぞ!!」
 今度は迷い無く手を伸ばして苺を取る。
 1口で食べて、そして。
「……うっめェ〜〜〜〜〜〜ッッ!!!!」
「甘ーーーーーいッ!!!」
 2人は同時に歓声を上げた。
 ウソップが思わず身を乗り出す。
「そ、そんなに違うのか?!!」
「おう!!全っっ然違うぞ!!!」
「めちゃくちゃ甘い!!!!すっげェウマいぞ、このイチゴ!!!」
 正直な2人の感想におかみさんは大きな声で笑った。
「そうだろう?丹精込めてるんだ、不味い訳が無いさ」
「うん!すげェウマい!!」
「よし、じゃあ、片っ端から引っ張りゃいいんだな!」
 拳を振り上げるルフィに、おかみさんは手を振った。
「いやいや、それじゃあ手間がかかりすぎるって。先ずはヘタを見るのが一番だよ」
「へた?」
「そう。ほら、見比べてごらん?」
 そう言っておかみさんが指差したのは、掌の上に残った2個のヘタ。
 片方はまだ青々としていて実に張り付いているが。
 もう片方は少し赤茶色くなっていて、実から反り上がっている。
 首を傾げる2人を見ながらおかみさんは言った。
「苺は完熟するとねぇ、ヘタが実から反り上がってくるんだよ。ほら、こっちがまだ熟してない方で、こっちが完熟の方。一目で解るだろ?」
 そう言われて全員が納得した。最初にルフィが取ろうとした苺はヘタが実に張り付いている方だ。
「そうね、みかんもそうだわ。よく考えれば同じよね」
 ナミが納得して頷く。その横でロビンが笑う。
 おかみさんは笑って立ち上がった。
「さて、と。この時間はオマケにしといてあげるからね。じゃあ、ガンバって摘むんだよー」
 手を叩いてそう言われて、皆は笑顔でまた温室の中に散って行った。


 1度、コツを掴むと後は簡単なもので。
 なるべく大きくて赤くて、ヘタが実から反っている物を探して摘んで行く。
 引っ張って取れなければそれは諦めて次を探して。
 大騒ぎしながら、籠の中は一杯になって行く。
 ルフィも摘むのに夢中で、つまみ食いを忘れている程だった。


「あ。コレだめかぁ」
 チョッパーが摘もうとした苺はまだ早かったらしく、蔓から取れて来なかった。
 その苺を2、3度引っ張って、チョッパーが小さく笑う。
 聞き止めたルフィが振り返った。
「どした?チョッパー」
「ん。なんかコイツさ、抵抗してるみたいだなって思って」
「抵抗?」
 ルフィが首を傾げると、チョッパーは笑って頷く。
「うん。まだ喰えないんだから取るなー・って言ってるみたいだ」
 その言葉にルフィも笑った。
「そっか!喰われたくなくて抵抗してるんだな、コイツ!!」



 その言葉に、サンジがぴたりとその手を止めた。



 場所が離れている上に、背を向けているので、2人はそんな事には気付かず。
「そう、そんな感じ!喰ってもおいしくないぞ・って!!」
 チョッパーは笑ってそう答える。
 ルフィも楽しそうに笑った。
「抵抗してるヤツは、まだ喰っちゃダメなんだな!!」
「そうなんだ!そういうヤツをムリヤリ喰ったらダメなんだー」



 止まったまま、サンジの顔が妙に赤くなって。



 だがまぁ当然、2人は気付いていないので。
 ルフィは笑って続けた。
「じゃあ、抵抗しなくなったヤツは喰ってもいいって事か!!!」



 その言葉に。
 サンジは顔どころか耳まで真っ赤になってしまった。









 この時、サンジが一体、何を考えたのか。

 それはサンジ本人にしか解らない。








 解らない・ので、当然2人は笑って話し続けている。

「そうそう!もう喰ってもいいぞって言ってるんだ!!」
 チョッパーは笑って。
 ルフィも頷いて。
「そっかー!そうだよな、どうせならオイシく喰うべきだよな!!」
 そう言って大きく笑った。




「やっぱ、抵抗してるヤツは喰っちゃいけねェもんな!!!」




 ルフィが大きく笑ってそう言った直後。




「…………ぅ、ぉらあああああッッ!!!!」


 いきなりサンジは飛び起きると、凄まじい勢いで2人に蹴りかかって行ったのだ。


「テ、テメェら、何て会話をしてやがるんだーーーーッッ!!!!」
「ぅおおおあッ?!!!」
「ぎゃーーーーっ!!!!な、なんだよサンジいきなりーーーッ!!!!」
 渾身の蹴りから大慌てで飛び退いて、ルフィとチョッパーが絶叫を上げる。
 突然の騒ぎに、他の皆も驚いて3人の方を振り返った。
 が、当の本人達は、まるで気付いていなくて。
「どうしたんだよ、急に!!」
「なんかおれ達、ヘンな事、言ったか?!!」
「ふざけるなァ!!!さっきから黙って聞いてりゃ、なんつー不謹慎な会話を……!!!」
「はぁ?!!!なんだそりゃ!!」
 ルフィは顎を落とし、チョッパーは目を丸くする。
 サンジはその2人の前に仁王立ちになり、全身から湯気を吹き上げている。
「サ、サンジ、おれ達ベツに変な事、言ってないぞ??」
 チョッパーがそう言っても、サンジの耳には届かない様で。
「こんな真っ昼間から、それもレディ達の目の前で!!!あんな事を口走るなんざ、どういう神経してやがるんだ、このクソ野郎!!!!」
 その言葉に、2人は訳が解らないと言う様に、目を丸くした。

「抵抗してるイチゴはおいしくない・って、そんなにヘンか?」
「えええ?なんかマズいのか??」





 そう言われて、サンジがぴたりと動きを止めた。





「…………    イ  、  チ ゴ  …… ?」

 何だか妙に不自然に固まったまま、呻く様にそう口にしたサンジに、ルフィとチョッパーは何度も頷く。
「おう、そうだぞ?イチゴの話だ」
「おれ達、ずっとイチゴの事、話してるだけだぞ?」
 チョッパーは気遣わし気にサンジを見上げる。
「なぁ、サンジ、どうしたんだ?急に。具合でも悪くなったのか?」
 不安げな視線に答えもせずに、サンジは固まったままで。
 顔から急速に血の気が引いて行く様まで見て取れるようで。
「イチゴ、の、話……?」
 呆然とそう呟くと、ルフィが大きく頷いた。
「だからそうだってば。何がヘンなんだ?」
 そう訊いても返事は無く。
 ただサンジは。


 又もや、それも、今までよりも更に真っ赤になってしまった。
 それはもう、ボン・という音が聞こえそうな勢いで。


「おーい、サンジ?サンジーーー??」
 目を見開いて全身真っ赤になって完全に石化したサンジを眉を寄せて見遣ってから。
 ルフィは不意に横を向いた。
「ロビン!なぁ、何がヘンなんだ?!」
 サンジから答えが得られないと判断して、質問の相手をロビンに変えたようである。
 解らない事は取りあえずロビンに訊け。ルフィの中ではそう言う事になっている様だ。
 焦ったのはサンジである。
「んなッ?!!!お、おい!!!」
 慌てて止めようとしたが、既に遅く。
 ルフィはロビンへともう1度大きく声をかけてしまう。
「ロビンー?なぁ?!」
「さぁ?どういう事かしらねぇ」
 慌てふためくサンジと裏腹に、落ち着いた声でロビンは笑う。
 片手を頬に当て、小首を傾げて。
 一見すると穏やかな笑顔だったが。

 ……その目が何処か、意地悪そうだった。


「若い男の人が考えている事までは、私には解らないから」


 にっこりと笑顔で。
 でも、そこはかとなく意地悪そうに。
 そう返されて。

 サンジは言葉に詰まり、ルフィは不服の声を上げた。
「ええぇ〜〜〜ッ?!!あ!ゾロ!!なぁ、ゾロ!!どういう意味なんだ?!!」
 同じ歳だから・と言う事なのかどうか、今度はゾロに矛先を転じる。
 が、ゾロも白々しく顔を背けてしまい。
「さァてねェ」
「ええ?!!なんだよ、それー!!!ゾロォ!!なぁなぁ!!!」
 両手を振り回して叫ぶルフィに、ちらりと視線を向けてから。
 ゾロは思い切り人の悪い顔で笑った。

「……エロ眉毛の考えがおれに解るワケねェだろ?」

 そりゃもう、意地悪以外の何物でもない顔で。
 流石にこれには、ルフィも反論する。
「えーッ?!!なんか今の、ウソっぽいぞゾロ!!!」
「マッ、マリモ!!!てめェ、いい加減な事を……!!!」
「なぁなぁ!おれも解んねェ!!何なんだよぉ、サンジー!!!」
 動揺するサンジの足元で、チョッパーが叫んでその足を掴んで。
 慌ててサンジが振りほどこうとした時。
 不意にフランキーが豪快に笑い飛ばした。
「はっはっはっ!!!!いーねェ、若ェってのは元気でよぉ!!!」
 その声にブルックも楽し気に笑う。
「ヨホホホ!本当ですね、羨ましい!私なんか、とっくにスカスカですよ。…って、私、骨ですからスカスカで当然でしたねー!!」
「何、言ってるのよ、セクハラ骸骨のくせに」
 笑ってくるくる回るブルックに、ナミが冷たい視線を向ける。
 その声に、サンジは真っ赤になって振り返った。
「ナ、ナミさん……ッ!!!」
 上擦った声でそう叫ぶと、ナミは視線を寄越して。
 目が合うと、くすりと笑い、ロビンの肩に額を寄せた。
 そのまま流し目でサンジを見てクスクスと笑う。
 それはもう、確信犯の如き笑みで。

「いやぁねぇ、もう、サンジ君ってば」

 そう言って笑うナミの顔は、まさに小悪魔。
 寄越す視線に、全て見透かされていると言外に告げられて。

 サンジはもう。


 撃沈するしかなかった。


「なぁってば!サンジ、教えてくれよー!!」
「そうだぞ!おれ達だけのけ者にすんのはダメだぞ!!」
「……ぅ、うう……ッ」
 左右からルフィとチョッパーに揺さぶられて。
 ナミがロビンの肩に顔を伏せて笑い出しても。
 それでもサンジは呻くのが精一杯。

 この間、ずっと無言だったウソップは・と言うと。
 1人、黙々と苺を摘み続けていたのだが。
 作業ペースが妙に早い上に、遠目でも解る程はっきりと首筋も耳も真っ赤で。
 だからまぁ、ウソップにもバレバレなのは、言うまでもない。

 で、解っていないお子様2人だけが、サンジにしがみついて離れなくて。

「サンジ!隠し事はナシだぞ!!ちゃんと話せよな!!」
「うん!教えてくれよーー!!なぁ、気になるだろーー!!!」
 ルフィに肩を揺さぶられ、チョッパーに足にしがみつかれた状態で。
 呻き声を上げるのが精一杯だったサンジが。


 とうとう、限界に達した。


「……ぅ、うるせぇぇえええええッ!!!!いいから忘れろーーー!!!!忘れてとっととイチゴを取らねェか、このクソガキどもがーーーーッッ!!!!」
「ぅおおおおッ?!!!」
「ぎゃああああ!!!サンジが逆ギレしたーーーッ!!!!」
 突然、叫んで暴れ出したサンジから、ルフィとチョッパーが大慌てで飛び退く。
 サンジは再び全身から蒸気を吹き上げて怒鳴り散らした。
「テメェら、ゴムとシカの分際で、くだらねェ事に何時までも拘ってんじゃねェ!!!!」
「いやゴムは関係ねェだろ!!!」
「おれはシカじゃないぞーッ!!!!」
「どうでもいいから、さっさとしやがれーーッ!!!時間が無くなるだろうがッ!!!!」
 サンジが蹴りを繰り出しながらそう怒鳴った時。
 タイミング良くおかみさんがベルを鳴らした。
「はい、あと30分だよーーー」
 大きくベルを振ってそう言ってから。
 おかみさんは身体を揺すって笑った。


「ほら、ぼうや達。おにいさんのお話は、あとでゆっくりたっぷりじっくりと、深ぁ〜〜〜く教えてもらうといいからねーーーー」


 あっけらかんと、むしろ楽し気な声に。
 サンジは、自分が砕け散って行く音を聞いた気がした。




「そうだな。サンジ、あとでちゃんと話してくれよ」
「そうだぞ!おれ、すっごく気になるんだからな!」
 ルフィとチョッパーが、そう言い残して側から離れて。
 皆が苺摘みを再開して。
 楽しそうな笑い声が、また響き始めて。

 その中で。


 サンジは独り、崩れ落ちる。
 自分が悪かったんだろうか・と、自問しながら。







 赤い苺達は一層赤くなって笑っていた。







23rd, JUN., 2008





ごめん、サンジwww

いやまぁ、苺に限らず野菜とか果物ってのは、
熟すると面白いように取れて来るんで。
ピーマンなんか、ポキポキ取れて楽しいよ〜〜。
ミニトマトなんて揺すったらボロボロ落ちて来るし♪

なーにを考えたんだか、サンジくんwww



2008.6.23



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