2年の時を経て再び走り始めたサニー号は、一路深海の魚人島を目指す。 目の前に広がるのは、海上からは想像も付かない様な絶景。 そんな風景の中で、ナミの「不思議話」をさっさと切り上げたルフィとゾロは、お互いの2年間の話で盛り上がっていた。 話せば切りがなく、別々に過ごした時間は双方にとって新鮮で。 苦労も相当あった筈なのに、肩を並べれば笑い話になってしまう。 一頻り盛り上がって、ようやく一区切り付いた時、不意にゾロがルフィの胸を小突いた。 「お?」 驚くルフィに、にやりと笑う。 「随分立派な『勲章』をもらったな」 その言葉に、ルフィが破顔した。 戦闘の傷跡は、戦士には誇りそのもの。 大傷ほど、死線を乗り越えた証と言える。 ルフィの胸には大きなクロスの傷跡。 一味が分散した時には無かったもの。 あの戦場で、ルフィが命を賭けた証。 強敵と戦い、そして生き延びた印だ。 その意味を知っているからこそ、ルフィは誇らしげに笑っって。 そして、言った。 「おう!ゾロより上だぞ!!!」 また…………ワケの解らん、でも確実に何時もの状況に発展する台詞を。 「ちょっと待て。何が上だってんだよ」 売られたケンカ……と思ったそれを、スルーする筈も無く。 一瞬で眉間に深い皺を刻んで、ゾロが凄んで来る。 が、ルフィも当然、その程度でひるむワケも無く。 むしろ得意げに胸を張って笑う。 「勲章の数だ!ゾロは1つ、おれは2つ!だから、おれの勝ちだ!!」 ぶつん・と、あっさりとゾロの血管が切れた。 「数で競うんじゃねェよ!ってか、テメェのそれも1つだろうが!!!」 怒鳴られてもルフィが動じる訳が無い。 「違うぞ!こうで、こう、だから2つだ!!!」 わざわざ手振り付きで、自分の傷跡の解説をする。 それが火に油を注ぐのは言うまでもなく。 「アホか!!こう付いた傷が、こう広がってるだけだろうがッ!!!」 「ぅおうッ!!!」 ゾロがルフィの胸をどつきながら自分の見解を吠える。 流石にちょっとよろめいたが、それでもルフィの持論は崩れない。 「違うぞ!おれが2つだと思ってんだから2つなんだ!!!」 「だからそのテメェ勝手な我が侭理論は止めねェか!!!大体、それで2つだっていうんなら、おれだって2つ目だぞ!!!」 そう怒鳴って、ゾロは自分の左目を指差した。 ゾロの左目を塞ぐ刀傷。 戦闘の傷跡ではないが、あの死闘のような修行を切り抜けた証だ。 それでもルフィは、ずい・と顔を近づけて挑み笑いを浮かべる。 「顔に傷ならおれだってあるぞ!ホラ!!」 得意げに見せるのは、左目の下の傷跡。 だけれども、それは。 「自分で付けた傷なんざ、数に入らねェよ!!!!」 ぶち切れたようにゾロが怒鳴る。 その言葉に、流石にルフィも口を尖らせた。 「そんな事はねェ!!!これはおれが勇敢だって証拠の為に付けた、立派な勲章だぞ!!!」 「テメェで顔を切っただけだろうが!!!」 「そうだぞ!痛かったけど泣かなかったからな!!」 「それがどうした!!とにかく、それはカウントに入らねェからなッ!!!」 「いーや、これも勲章だぞ!!だからおれは3つで、おれの勝ちだ!!!!」 「自分で斬ったのも入るってんなら、おれだって足に2つ残ってるぞ!!!!」 「それはダメだ!2つで1個だぞ!!!」 「だったらテメェのソレも2個じゃなくて1個だろうが!!!!」 「何言ってんだ!!これは2つだって言ってるだろ!!!!」 「いい加減にしねェかッ、この我が侭船長!!!!」 サニー号はどんどん深海へと潜って行く。 巨大なマングローブの根の間を縫って、見た事の無いような大型の海王類の影が過る。 降りるにつれ深みを増す海の青。 その姿を変えて行く魚の群れ。 遠ざかる水面の輝き。 そんな絶景が、その背に広がっているというのに。 何処までも相変わらずな2人の怒鳴り合いは、何時までも続いていた。 海の上だろうと中だろうと、2年という歳月が経とうとも、全く変る事無く。 「ま、何時もの事だから」 だから、仲間達も海も、特に気にしてはいなかった。 変らない方が良いものもあるのだ。……多分。 9th, JUN., 2011
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ノーコメントw 変らんという事ですよ。 コイツらも、ついでに私もwwww 2011.6.9 |