少し、時間をさかのぼって。 2人が同居した当初の話なぞ。 「ただいまーーーー!」 「……おぅ、おかえり」 威勢良く玄関を開けて帰って来たルフィに、ゾロのちょっと歯切れの悪い返事が答えた。 当のルフィはそんな事気にもせずに、いつもの全開の笑顔で駆け込んで来る。 「ハラ減ったーー!なぁ、メシ出来てる?」 「………まぁ、一応な」 「ししし、やったー!やっぱ帰って来てメシが出来てるってサイコーだなー!!」 部屋に鞄を放り込んで、即座に居間に駆け戻って来るルフィに。 ゾロは、何だか深く溜め息を吐いた。 腕を組んで、眉間に皺……はいつも寄っているが、それでも妙に気難しい顔。 「ゾロ?」 流石にルフィも気付いて、怪訝そうな顔をする。 同居し始めてまだ数日。 でも、この同居人はいつも小難しい顔をしているが、実はそれ程深刻に不機嫌な訳じゃない事ぐらいはもう知っていたから。 だから、ちょっと首を傾げた。 今日は、どうにもいつもと違うようだ。 「……あのな、ルフィ」 怪訝に思って顔を覗き込んだら、妙に神妙な声が呼んだ。 「おう、どうした?」 ルフィからも笑顔が消える。 逆に首を傾げながら、ちょっとだけ難しい顔をしてみる。 その様子にもう1度ゾロは溜め息を吐いて。 そして、意を決した様に、口を開いた。 「…………今日の晩メシだけどよ」 時間が掛かった割には、その話題は存外普通だったけど。 だがしかし、残念な事に聞いた相手が普通じゃなかった。 「メシ?!!メシがどうかしたのかッ?!!!」 「はっ?!!あ、い、いやどうってんじゃなくてな」 いきなり物凄い剣幕で返されて、ゾロは思わず仰け反ったが。 ルフィは尚も身を乗り出して来る。 「まさか失敗したのか?!!ゾロ、コメなら炊けるって言ってただろ!!!」 ゾロが引っ越して来てからの数日は荷解きやらなんやらでお互い忙しく、買って済ませるか近所の安い食堂に行って食べたりしてたのだが。 今日はようやくゾロが落ち着いたのと、ルフィが部活と用事でゾロより遅くなるという事で、ゾロが作る事になっていた。 大したモンは出来ねェぞ・と念を押されてはいたが、ゾロが母親から鍋で米を炊く方法を伝授されていると知って、ルフィは密かに楽しみにしてたのだ。 米さえ炊けていればおかずは何でも構わない・と、今朝そう話していたのだが。 「いや失敗はしてねェ、ただな、その」 慌てて手を振るゾロに、一瞬でルフィの顔にいつもの呑気な笑顔が戻った。 「なーんだ、だったらいいじゃねェか。コメが出来てんなら問題ねェだろ。メシにしようぜ、おれハラ減ったもんよ」 歯を見せて笑うルフィに、ゾロは眉間を押さえて。 それから1度、ゆっくりと頷いた。 「……解った、今、用意する」 「おう!メシだーメシだーーー!!…っと、ぅおッ?!!」 「但し!」 大喜びでテーブルに向かおうとした襟首をいきなり掴まれて。 驚いて振り返ると、妙に真剣なゾロの顔に出会った。 「条件がある!」 「お、おぅ?」 ずいっ・と顔を寄せられて、凄む様に言われて、反射的に首を縦に振った。 目を見開くルフィと反対に、ゾロはそうじゃなくてもキツい目つきを更にキツくして見据えて来る。 何事か・と瞬きを繰り返すと、ゾロが異様な迫力と共に口を開いた。 「何が出ても、絶対に文句を言うんじゃねェぞ。いいな」 ルフィの大きい目が更に大きく見開かれた。 「へ?食えるモンなんだろ?」 「当たり前だ!食えねェメシを作った記憶はねェ」 きょとんと問うと、威勢の良い答えが返る。 それを聞いてルフィはからからと笑った。 「だったら文句なんかねェよ。胃に入りゃあみんな同じじゃねェか」 相変わらず凄んで来るゾロの肩を豪快に叩きながら笑う。 その答えに、ゾロもようやく大きく頷いた。 「よし、約束だ。守れよ」 「おう!さー、メシにしようぜ!!おれハラへって変になりそうだぞー!!!」 笑って椅子に座ったが、ゾロはどうにもまだ険しい顔で。 まずは、と出て来たのは、みそ汁と漬け物。 「どっちも既製品だからな」 「しししし、気にしねェって!!」 ルフィだってみそ汁や漬け物なんて作った事もない。エースがたまに作ってくれたが。 それから、と背を向けたゾロが。 振り返って、でん・と勢い良くテーブルに乗せたのは。 大皿に、これでもか・と言う程山積みになった、実に大量のおにぎりだった。 「………………?!!!」 これには、流石にルフィも箸を握り締めて固まってしまった。 「あーーー……、なんだ、つまりな」 石化したルフィに、ゾロが片手で顔を覆いながら口を開く。 「おれは、コメは炊けるんだが」 はぁ・と溜め息1つ吐いて。 「おかずってヤツは作った事がねェんだ」 道理で・と納得するしかない理由を口にしていた。 「あ、カンヅメならあるけど食うか?サバの味噌煮とサンマの蒲焼き」 「お、おう、食うぞ」 聞き覚えのある食べ物の名前に、ルフィは我に帰って返事をした。 缶詰をテーブルに並べながら、ゾロはまた溜め息を吐く。 「卵焼きぐらいなら出来るかと思ったんだがなぁ」 そう言って、大量のおにぎりの隣に並んだ更には、なにやらワケの解らん形をした黄色い物体。 ……どう考えても、作ろうとして崩壊した卵焼きだろう。 焦げ目が少ないのが、立派と言えば立派かもしれない。 どうにもバツの悪そうな顔のゾロに、ルフィは思わず苦笑した。 どうやらこの新しい同居人は、メシが上手く作れなかった事をかなり気にしているようだ。 「炒り卵だと思えばいいんじゃねェか?」 明るく笑ってそう言うと、ゾロが驚いたように顔を上げた。 一欠片つまんで口に放り込む。 「んー、悪くねェけど、もっと甘い方がおれは好きだなー」 「は?!これ以上、甘くするのか?!」 「おう!卵焼きは甘〜〜〜いモンだろ?」 「ウチはこんなもんだぞ」 「えー?じゃあおれ用はもっと甘くしてくれな!」 「……マジかよ、おい」 絶句するゾロに、ルフィは笑った。 「さ、それよりメシにしようって!!もう限界だぞ、おれ!!」 その言葉に、ようやくゾロも笑みを見せた。 「ああ、悪かった」 「心配すんな!おにぎりも好きだしよ!!いただきまーーーーす!!!」 「おう、いただきます」 笑顔でおにぎりを鷲掴みにするルフィに吊られた様に、ゾロも手を伸ばす。 うめェ!と笑って食べるルフィを見て、やっと安心したような表情を見せたが。 次の言葉に、その表情も固まってしまった。 「大体さぁ、おれ、ゾロよりメシ作れねェからなー!!!」 あっけらかんと言われた台詞の意味する所を瞬時に察して。 もしかすると、同居相手を間違えたかもしれない・と思ったゾロだった。 7th, JUN., 2011
|
久々に書いたのがコレってどうよw んー、まぁ文章リハビリって事でーーー! この後ゾロは「肉を焼く」という事を覚えまス。 あと、部活の合宿とかで作ったカレーの作り方も思い出すでしょうw それから、レトルト製品って物も学びますのよwww 米の炊き方だけはマスターしてるので、メニューは主に丼もの。 カレーとかカルビ丼とかソースカツ丼ただしカツは既製品とかレトルトとか。 ……って、作った料理って、カレーぐらい??? まぁ男の自炊なんてそんなもんか!!! ちなみにルフィは作らんですよw 買って来るのでねー!!! 2011.6.7 |