この同居人と暮らしていると、多少の事では驚かなくなったつもりだったけれど。 それでもやっぱり、唖然としてしまう事は起こるらしい。 「………………なんだ、これは」 大学から帰って来たら居間のテーブルの上に鎮座していた物を見て、思わずそう呟く。 いや、何かと問われればその名前はすぐに出てくるが。 問題は、何故こんなものが、こんなに大量にあるのか・だった。 今、ゾロの目の前にあるのは、この家で一番大きなボウルに山と盛られた駄菓子だった。 「おやつにでも食う気だったのか?」 それにしても、余りにも大量。 チョコレートに飴、キャラメル、その他たくさん。落花生や小袋の珍味まで入っている。 チョコは珍しく個包装されたものだ。 普段は1つ1つ開けて食べるのがメンドクサイ・と言って、大袋にそのまま入っている物か板チョコばかりを買って来るのに。 首を傾げつつも、取りあえずは台所に向かう。 今日は節分。 恵方巻は買って来たので、後は鰯を焼いて蕎麦を茹でるだけで済む。 どちらもルフィが帰って来てからだな・と思っていると、玄関の鍵が開く音がした。 「ただいま〜……、って、あれ?!ゾロ帰って来てんだ!!」 バタバタと走ってくる音につい苦笑する。 「おかえり」 「ただいま!ゾロ、豆まきだぞ!!」 「メシが先じゃなくていいのか?」 絶対に夕飯が先だと思っていたのだが。 疑問にルフィは歯を見せて笑う。 「先に豆まきなんだ!メシはひと仕事終わってから食うのがウマいんだ!!」 「解った」 両手を振り回して笑うルフィにどうしても苦笑が漏れる。 豆まきが楽しみで仕方ない・という顔だ。どう見ても。 ホント、ガキだな・と心の中だけで呟いておく。 大人っぽいルフィなんて、逆に想像出来ないのだし。 そんな事を考えていたら、いきなり目の前に先程の駄菓子の山が突きつけられた。 驚く間もなく、ルフィが言い放った事は。 「じゃあ、豆まきするぞ!!!」 「は?!!」 駄菓子と豆まき。 それはどう考えてもゾロの中では結びつかなかった。 反応出来ずに固まっているゾロに、ルフィは全開の笑顔のままで駄菓子の山を差し出している。 一体、どのぐらいの時間、呆然とそれを見ていたのか。 のろのろと頭が動き出して、ようやくゾロは口を開いた。 「豆……まき?だろ?」 「おう!そうだぞ、ホラ!!」 戸惑いの欠片も無く突きつけられる駄菓子の山。 ……という事は、つまり。 「………………コレで、か?」 確認するのがコワい気もしたが。 問いに全開の笑顔が答えだった。 「なーーーーに言ってんだよ、ゾロ!!とうぜんだろー?!!」 「いやそこは絶対、当然じゃねェ!!!!」 思わず怒鳴ると、きょとんとした顔でルフィは首を捻った。 「は?フツー、豆まきにはチョコをだろ?」 「普通は豆だ!!豆をまくから豆まきってんだろうがッ!!!」 「それはムカシの話だぞ?今はチョコをまくんだ」 「いや、今でもまくのは豆だ!!!」 「豆も入ってるぞ、ホラ」 「落花生だろうがそれはッ!!!大豆をまくんだよ!!!!」 「だからそれはムカシの話なんだってば。それに落花生はカラ付きだから、床に落ちたの食べても安心なんだぞ?」 「テメェはホコリぐらいじゃ死なねェだろ!!!!」 そういう理由でチョコが個包装なのか・と漸く理解したが。 それにしても。 豆まきに、チョコ。 しかも、年の数だけ食べるのか? 「大体、そんな甘ったるいモンを年の数だけ食えねェぞ、おれは!!」 その怒鳴り声にも、ルフィの笑顔は崩れなかった。 「おう!だからゾロ用に柿ピーと珍味も入れといたぞ!!」 底抜けの笑顔で宣言されて。 最早、勝ち目は無い・と諦めるしかなかった。 「ゾーローーー?ほら、早く始めっぞーーー?!!終わったら恵方巻食うんだから!!!」 笑顔で窓を開け始めるルフィを見て。 もう1度、山盛りの駄菓子を見て。 こんな物まいたら、逆に鬼も喜んで寄ってくるんじゃないだろうか・と思ったが。 思いはしたが。 「………………しかたねェなぁ」 郷に入りては郷に従え。 その言葉を思い出して、ゾロは漸く重い腰を上げた。 豆まきらしくない豆まきをするために。 「よーーーーーしッ、オニはーーーーッ、外ーーーーーーー!!!!」 バラバラと飛び散る駄菓子に、果たしてご利益があるのかどうかは誰も知らない。 4th, FEB., 2010
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昨日、豆を食べながら思いついたネタw 落花生まきは北海道では標準。 そんで、チョコまきは。 子供の頃、実家でやってまシたwwww 母親が!どうせなら一杯食べれる物の方がいい・って言ってw チョコとか福豆とかうぐいす豆とかまいてたwwww 一般的には大豆だって知ったのは、かなり大人になってからでスw あー、鰯も大人になってから知ったけど; 蕎麦ってのもあるらしいが、どうなんだ。 以下、オマケの会話。 2010.2.4 |
「そういやルフィ、恵方巻、5本セット頼んだのか?」(←恵方巻を予約したのはルフィ) 「そうなんだ!6本入りってのがなくってさー!!なぁ、おれ3本食べてもいいか?切っちゃダメなんだろ?」 「…………3本も食うのが、お前」 「ん?フツー3本食うだろ?」 「………………おれは1本でいい」 「ええええ?!!!ゾロ、小食だなーーーッ!!!」 「いや他に、鰯と蕎麦もあるんだが……」 「おう!もちろん全部食うぞ!!!!」 「…………ハラ壊すなよ、頼むから」 |