地上の楽園・0






「……アマルフィ?」
「おう?なんだ、ゾロー」


 お互いに予定の無い呑気な日曜日。
 朝食も終わって、特にやる事もなくのんびりだらだらしていたのだが。
 不意にゾロが口走った単語に、ルフィが返事をした。
 ルフィにしてみれば、呼ばれた・と思ったから応えたワケなのだが。

「いや…………アマルフィって」
「だから何だ?」
 もう一度繰り返すゾロに、首を傾げる。
 自分の名前を言っている筈なんだけど。
 なんか変な単語が前にくっ付いてはいるが。
「…………雨(あま)・ルフィ?」
「だからなんなんだよ、ゾロ」
 新聞を見下ろす体勢のまま、何度もゾロは同じ言葉を口走る。
 ルフィはますます首を捻る。
 そのまま身体も捻って、斜め下からゾロを覗き込む。
 ゾロは何時もより眉間に皺を増やして目を細めて、じっと新聞を見ていたが。

 ゆっくりと。
 口走った。



「………………あまる・ルフィ?」



 ダジャレと言うにはそれはどうかという様な言葉を。






 部屋の空気が、一瞬にして凍結した。






 が、それも一瞬だけで。
 次の瞬間、ルフィの絶叫が凍った空気を打ち砕いていた。

「ええええーーーーーーッ!!!おれって余ってるのか?!!!」
 そう捉えたか・とツッコミたくなるような反応だったけれど。
 相手がゾロだったから。
 当然、そんな反応はなくて。
 むしろ、うーん・と首を捻ると。
 溜息と共に、頷いていた。
「……まぁ確かに、持て余してる…かな」
「ぅわーーーーーッ!!!ゾロひでぇーーーーーーッ!!!!」
 あんまりな返答に、ルフィは一層大きな悲鳴を上げて。
 向かいからゾロの肩を掴むとガシガシと揺さぶった。
「おれ余りか?!なんでだよーーー!!ゾローー、なぁなぁ、余りはひでぇんだぞーーー?!!」
「あーーーーー……、わかったわかった」
 揺さぶるルフィの頭を、ゾロは苦悩の表情で抑える。
 朝っぱらから脳天シェイク攻撃は止めて欲しい……そうじゃなくても、まだ眠いのだから。

 そう、実はゾロはまだ寝ぼけていた。


 朝食の当番はルフィだったから、作る手間がなくて。
 朝の仕事が無かったから、脳味噌の覚醒に何時も以上に時間がかかっていて。
 昨日も課題とバイトで遅かったから、余計に眠さが取れなくて。

 半分寝ながら朝食を終えて、読むでも無く新聞を広げて、回転してない頭でただぼんやりと紙面を眺めていたら。
 ふと視界に入った単語を。
 そのまま口走っただけだったから。


 正直、この単語がどういう意味なのか、そもそも何なのかすら解っていなかったりしたのだった。


 見覚えのある名前が付いていたから、口にしてみたけど。
 さっぱり意味が解らず、繰り返してみただけ。
 はっきり言って、深い意味は欠片もない。



 まさかそれが原因で、こういうやり取りになるとは思いもしなくて。



 取りあえずルフィの頭を押さえて、揺さぶるのは止めさせてから。
 溜息を吐いて、目の前の顔を見た。
 何時に無く真剣に、目を見開いて、ちょっと縋るような顔でじっとこっちを見ている。
 ぽんぽん・とその頭を叩いた。

「…………余らすのはヤメにしとく」

 何て言っていいのか解らず、そう言ってみると。
 一瞬でルフィの機嫌が上昇した。
 にぱ・という効果音が付きそうな笑顔。
 なんというか……単純としか言いようが無い。
「おう、ありがとなー、ゾロ!!」
「……ドウイタシマシテ」
 上機嫌の笑顔に、小さく答えて。
 そうしてもう一度、新聞に目を落とす。
 ちょっとだけ、脱力の溜め息。




 ………………やっぱり持て余してるよな。




 というか、もてあそばれてる?
 ……いや、それも違う気がする。
 もて……もて、余す、なのだろうか。
 振り回されてる…………が、正しいか。

 霞が掛かった思考の中で、そんな事を思いながら。
 ゾロの瞼は徐々に下がって来て。
 向かいでルフィが上機嫌で何か言っている声が、子守唄に変わって。
 そうして。
 ゾロが新聞に撃沈したのは、この僅か10秒後。
 独り取り残されたルフィが、叫んだ。






「やっぱり余ってんじゃんか、おれーーーーーッ!!!!」







 そんな平和な日曜日の朝の風景。

 







23rd, AUG., 2009





すっげーーーー、意味が無いwww
アマルフィ・って映画が上映されたみたいだけど見てない。
内容すら、知らないんだけどーw
タイトル見た瞬間、思った・・・よね?www

アタシの寝起きはこのゾロとあんまり変わりませンw



2009.8.23



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